奈良時代・天平宝字3年(759)の元日。因幡守として都を離れた大伴家持が、国庁で開いた新年の宴で詠みました。四千五百余首を収める『万葉集』の巻末を飾る歌で、家持はこの後も長く生きましたが、歌は一首も残していません。
「新しい年の初春の、今日降る雪のように、良いことがいよいよ積み重なりますように」——都から遠い任地での門出に、恨み言ではなく祝福を選んだ祈りの歌。万葉集の長い歌の歴史は、この前向きな一首で静かに閉じられています。
歌詞は、都から離れた任地で新年を迎える家持の心を、現代の「再出発の冬」に重ねました。うまくいかない言い訳ばかり積もる夜に、雪が降る。積もれ、積もれ、いいことだけ積もれ——逆境の中でまっすぐに祈る、前向きの歌です。
窓の外 白く染まる街
うまくいかない 言い訳ばかり積もる
都会を捨てたんじゃない 捨てられたんだ
そう拗ねた夜に 雪が降る
新しき 年の始まりに
まっさらな今日を 数えるように
あらたしき 年の初めの 初春の
今日降る雪の いやしけ吉事
積もれ 積もれ いいことだけ積もれ
この手のひらに 春を待つ
名門に生まれた 因幡の地で
受け継いだ名の重さに 背を曲げる
栄えた一族も 今は遠い昔
沈みゆく舟を 見ているようだ
祝いの言葉を 宴にのせて
本当は祈ってた 若菜萌える春を
あらたしき 年の初めの 初春の
今日降る雪の いやしけ吉事
積もれ 積もれ いいことだけ積もれ
不遇な今日に 春を待つ
あらたしき 年の初めの 初春の
今日降る雪の いやしけ吉事
古の君も 同じ雪を見て
祈っていたんだね 明日が来ることを
泡雪はやがて 解けて川になる
野を越え 海へ 時を越えて
あらたしき 年の初めの 初春の
今日降る雪の いやしけ吉事
降り積もれ 願いも 祈りも全部
明けない夜は ないと信じて